オンライン服薬指導恒久化によって何が変わる?抑えておきたい方針の中身と今後備えておきたいこと
2021年07月30日
目次
1. 規制改革実施計画で示されたオンライン診療・服薬指導の恒久化
2021年6月、規制改革実施計画が閣議決定されました。進歩の著しいデジタル技術を活用した複数の計画が盛り込まれている中で、オンライン診療とオンライン服薬指導についても現在の特例措置として実施されている0410通知を恒久化する方針が示されており、令和3年度から検討を開始し令和4年度から順次実施していくとされています。
2. 現状の法制度と方針の違い ※2021年7月現在
※2021年7月現在
今回示された規制改革実施計画は実際の法制度ではなく、これから何をゴールにどんな方針で法整備をしていくかを示したものになります。そのため未確定要素も多くありますが、オンライン服薬指導の要件などについて具体的な内容もありました。下記は実際に計画で記述された内容です。
“ オンライン服薬指導については、患者が オンライン診療又は訪問診療を受診した場 合に限定しない。また、薬剤師の判断により 初回からオンライン服薬指導することも可 能とする。介護施設等に居住する患者への実 施に係る制約は撤廃する。これらを踏まえ、 オンライン服薬指導の診療報酬について検 討する。”
※規制改革実施計画より引用
今回の方針で示されたオンライン服薬指導の要件に関する内容を、改正薬機法その他のオンライン服薬指導に関する制度と比較した違いは下記の表の通りです。
3. 恒久化によって変わる患者の薬局の選び方
今回の方針が実施されると、対面診療を受診した患者もオンライン服薬指導を選ぶことができるようになります。これは患者の薬局の選び方にも変化を起こすのではないでしょうか。
これまで、医療機関で対面診療を受診した多くの患者にとって、お薬は近隣のいわゆる”門前薬局”で受け取ることが当たり前でした。また、かかりつけ薬局として幅広い医療機関の処方箋を受け付けようと思っていても、近くの門前薬局ではなく敢えて離れた薬局を選ぶ理由を提供する難易度が高かったため、多くの薬局がかかりつけ薬局化を実現することが出来ずにいたというお声を薬局経営者からも耳にしました。
しかし恒久化の方針の通りに、対面診療を受診した患者がオンライン服薬指導を選択できるようになると、薬局で待つことなく自宅でいつものかかりつけ薬局でオンライン服薬指導を受けられるようになります。かかりつけ薬局として患者に選ばれるチャンスと捉えられる一方で、これまで門前薬局として患者に選ばれていた薬局は、これからも選ばれ続けるために立地以外の価値提供が出来るように取り組む必要があると言えます。
4. 選ばれ続けるために大事な3つのポイント
今回の方針を受けて、各薬局がそれぞれのスタイルで患者への価値提供を強化していくと考えられます。代表的なものを上げると、次の3つの価値提供方法があります。
①待ち時間の短さ
患者の多くは、出来るだけ薬局で早くお薬を受け取りたいと思っているのではないでしょうか。また、新型コロナウイルス感染症対策のために、出来るだけ薬局内には長く滞在したくないというと思っている患者もいるでしょう。対面服薬指導時に他の薬局よりも待ち時間が短いというのは、1つの価値になりえると思われます。
オンライン服薬指導が恒久化されたとしても、すべての処方箋をオンラインでとなるわけではなく対面とオンラインを組み合わせて薬局を利用するというケースの方が多いと思われます。患者にとって対面でもオンラインでも便利な薬局であることは、かかりつけ薬局としての価値につながると思われます。
②利便性の高さ
待ち時間が短いこと以外にも、営業時間が長いことやOTC・日用品も揃えている、キャッシュレス決済が出来る等、利便性が高い薬局になることも患者にとっての価値に繋がります。最近増えている調剤併設のドラッグストアでは元々これらの要素を持っていたこともあり、かかりつけ患者の獲得につながっているケースをよく耳にします。
③薬物治療に関する専門性やコミュニケーション力の高さ
最後に弊社がこれからも患者に選ばれ続けるために最も重要だと考えているのが、薬物治療に関する専門性や患者とのコミュニケーション力の高さです。患者が抱えるお薬や治療に関する不安を解消してくれる安心してかかることが出来る薬局として患者に認識してもらうことで、門前薬局より離れていても利用したいと思ってもらえることに繋がるのではないでしょうか。前述の①と②が設備投資で対応可能なため、他の薬局との差別化は難しい一方で、こちらは薬剤師やスタッフが日常的に意識して行動をする必要があり難易度が高いと言えます。そのため、この価値提供ができると強い差別化に繋がるものと考えられます。
5. 服薬フォローアップの重要性がますます高くなる
これまで、薬物治療に関する専門性やコミュニケーション力を発揮する場面の多くは服薬指導中が多かったと思われます。丁寧にお薬の服用方法や注意点について説明をした上で不安要素がないかヒアリングをすることで価値を提供してきました。
これからはこの服薬指導時に加えて、服薬中のコミュニケーションにおいても価値提供のチャンスがあります。服薬指導時には不安がなくても、服薬中は症状や体調の変化から具体的な不安を持つ患者もいます。そのような患者をフォローし、服用についてのアドバイスや健康相談を行うことで信頼を得ることができ、かかりつけ薬局として選ばれる理由に繋がります。
また、フォローアップによって得られた情報を処方医へフィードバックすることで次回以降の処方設計を支援することで処方医と協力して治療に向き合ってくれる薬局という認識につながります。
さいごに
このように、オンライン服薬指導の恒久化は患者の薬局の選び方と薬局の価値提供のあり方へ変化を起こすのではないかと考えています。これらの変化は2015年に示された”患者のための薬局ビジョン”と共通するものがあります。これまでも「立地から機能へ」「対物業務から対人業務へ」「バラバラから1つへ」という方針の元、調剤報酬や改正薬機法の改定が進められてきました。2025年と2035年それぞれの目標の実現のために、今後もこのような改定は進められていくと考えられ、薬局は将来に向けて継続的に取り組むことが求められています。
Pharmsではこれらの取り組みを行う薬局に向けてかかりつけ薬局支援システム「Pharms」を提供しています。服薬中の価値提供を支援する服薬フォローアップ機能とトレーシングレポート機能、利便性を支援するオンライン服薬指導機能や処方せんネット受付、キャッシュレス決済機能などを提供しています。詳しく知りたい方はぜひ下記から資料をご請求ください。
本記事の執筆者
株式会社メドレー Pharms事務局
調剤薬局の皆さまに向けて、法制度やトレンド情報の解説などのお役立ち情報を、薬局様からのリアルなお声も基にし発信しております。
Pharmsは全国13,000店舗以上の調剤薬局にご導入いただいており、患者や医療機関との繋がりを強化し選ばれ続ける薬局に向けたご支援をしております。